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中国・広州からラーメン、グルメレビューや一人暮らし料理のレシピなどの発信。

グルメレビュー【お粥】 陳老添美食店(広州)

総合評価: ★★★☆

 

今回は広東人のソウルフードであるお粥がテーマです。広州地下鉄1号線の長寿路駅から徒歩5分の路地裏に位置する陈老添美食店というお店をレビューします。

中国人にとってお粥は完全に生活に密着しており、古くから親しまれていた料理の様です。その歴史は古く、紀元前10世紀の周の時代から食べられていた記録があるとかで、実に3000年もの歴史があるんですね。さすが中国、お粥一つ取ってもスケールが違います!

 

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駅を出て宝华路Bao3Hua2Lu4という大通りを南下して間も無く、小さな路地を右に曲がった先に店が見えてきました。縦長の看板に赤字で大きく「陳老添」と記載があり分かりやすいですね。これなら見逃す事は無さそうです。

 

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入口です。非常に質素な雰囲気です。入口に店員さんが何人かいましたが入りにくいという事は無く、嫌いじゃないですね、こういう感じ。


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行ったのは朝10時過ぎだったため他のお客さんはまばらです。今日は休日の朝、まったりブランチを楽しめそうです。


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 メニューを見てみます。上にある方がオススメメニューでしょうか?

 左端に「传统与地道Chuan2Tong3Yu3Di4Dao4(伝統と本場)、右端に「西关老字号Xi1Guan1Lao3Zi4Hao4(西関の老舗ブランド)」との記載があり、どうやら「祖传爽鱼皮Zu3Chuan2Shuang3Yu2Pi2」「传统艇仔粥Chuan2Tong3Ting3Zai3Zhou1」「豉油皇肠粉Chi3You2Huang2Chang2Fen3」3品が看板メニューの様です。上部にある写真で言うと左から祖传爽鱼皮,传统艇仔粥,豉油皇肠粉ですね。

 ちなみに「祖传爽鱼皮」の「祖传」は「先祖伝来の」といった意味で、「爽魚皮」は広東料理の聖地、順徳の伝統料理です。爽という字が入ってはいますが、この料理は魚の皮を湯引きして生姜やネギなどの香味野菜、ピーナッツなどと和え味付けしたもので、日本人にはややハードルが高いかな?といった見た目の料理です。私もまだ未体験なので機会があれば是非このブログでも紹介してみたいと思います。

 また「豉油皇肠粉」の「豉油」とは広東語で醤油のこと、「皇」は特上という様な意味、「肠粉」は以前のラーメンレビュー 西関明記腸粉でも記載した通り、米粉で出来た広東名物の点心です。

 今回は迷うことなくお目当ての传统艇仔粥(伝統艇仔粥)11元を注文します!


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 席につき調味料チェックです。奥が酢でその右が辛味ペースト、一番手前が胡椒と非常にシンプルなラインアップです。

 中国では全国各地で朝食としてお粥が食べられていますが、地域によってそのレシピは異なる様です。

 例えば北京など比較的北の方では味付けされていない白粥が一般的で、これにザーサイや豆腐ようなどで味付けし、中国式揚げパンである油条You2Tiao2や具無しの肉まん=馒头Man2Tou2などと一緒に食べるのが一般的と言われています。

 一方でここ広東省のお粥は魚介類や肉などのダシと塩や醤油で味付けされているのが一般的で、白粥と比べると非常に旨味の強い料理となっています。有名なところでは豚肉とピータンが入った瘦肉皮蛋粥Shou4Rou4Pi2Dan4Zhou1などが挙げられ、昔から私も大好きなメニューでした。

 今回は広東粥の中でも広州名物ともいえる「艇仔粥」を食べたくてこの店までやって来ました。

 


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3分ほどでお粥が到着です。色々な具が入っていて見るからに美味しそうなお粥です!

 「艇仔粥」は元々広東省福建省などの沿岸や河川の水上で暮らす「蛋民Dan4Min2」と呼ばれる人々が作り出した料理と言われており、魚や肉、ピーナッツや油条などをふんだんに使った、非常に旨味のあるお粥です。

 なお、水上生活者の「蛋民」という呼び名は明らかに蔑称です。中国語で「馬鹿!」の事を「笨蛋Ben4Dan4!」などと言うのですが、卵を意味する「蛋Dan4」という言葉は中国語では軽蔑の意味が込められます。実際、この水上生活者は漢民族ながら昔から教育や通婚などの面で差別を受けて来たようです。この様な素晴らしい料理を考え出した人々が差別を受けて生活していた事は、いろいろ考えさせられますね。


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まず、中国の朝食ではお馴染みの油条です。日本でいえば麩の様な感じですかね。こうして旨味たっぷりのお粥に入れると、味がしみ込んで美味しいんです。



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これは豚肉、というかハムと思われます。こういう塩味と旨味の塊の様なものを入れて煮込むので、その食材の旨味がたっぷりお粥に染み込み、一口食べるだけで口いっぱいに美味しさが広がります。


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これはタコでしょうか?魚介類もしっかり入っていますね。


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これは、貝柱ですかね?そりゃ旨味もたくさん出るわなー!


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ピーナッツ生姜など、もう食材の宝石箱やー!(笑)


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魚の身らしきものも入っていました。次から次へと食材が出てきて、レンゲが止まりません。これは魅惑のお粥です!


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最後に辛味ペーストを入れて味変を試みます。


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果たしてお粥と合うのかどうかチキンで自信が無かったので、レンゲの中だけで試します。あぁ、やっぱり辛味ペーストは余りおススメ出来ないかな?本来の旨味を楽しんだ方が良さそうでした。


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あっという間に完食!今日の私にとって理想的なブランチとなりました。

 

私は、広州に住むまではお粥という食べ物にそれ程興味を持ってはいませんでした。

ところが、ワンタン麺をきっかけに広東省のローカルフードに触れていくうちに、広東省のお粥はかなり奥が深そうだぞ、という事に気付き始めました。先ほども書いた通り、元々はお粥と言っても瘦肉皮蛋粥くらいしかメニューの知識が無く、しかも香港空港辺りで結構な値段を支払って食べていたりしたので、そこにグルメとしての広がりを感じるまでには至っていませんでした。

元々は華南の被差別民であった水上生活者が考え出したというこの艇仔粥は出汁になりそうなものがたくさん入っていて、食べている間夢心地になって来るお粥です。日本のお粥とは全く違うこの料理をまだ未体験の方は是非広東省や香港でトライしてみて下さい。朝食に是非おススメしたいです。今回はもっと素晴らしい艇仔粥との出会いに願いを込めて星3.5★★★☆とします。

 

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